【臨床研究雑感】

自分はこれまでブログを書いたことが殆どないのですが、増田先生がラボブログを開設し、若手の先生方が折を見てブログを書いてくれているので、自分もたまにはとりとめのないことを思いつきで書いてみたいと思います。

自分は経頭蓋磁気刺激法(transcranial magnetic stimulation: TMS)や脳波などを専門に臨床研究を行っております。この分野の仕事を初めて彼是もう10年が経ちます。もっと若い頃は何気に基礎の研究室で遺伝子改変モデルマウスを使った電気生理研究などもやっていました。

臨床研究が医学や医療技術の発展のために重要であることは、言わずもがななので敢えて書きませんが、これまで様々な臨床研究に携わってきて、ラボを運営し、研究をマネージする立場になってくると、改めて「研究を成り立たせるために重要なものは何だろうか?」とふと考えることがあります。

良く言われるのは、1)研究室が扱っているテーマに独自性や独創性があり、2)研究開発技術力があり、3)潤沢な資金があり、4)ボスがまともな人で指導体制がしっかりしている、5)ラボメンバーが皆活躍していること、などだと思います。勿論、すべて重要な条件ではありますが、要約すると「ヒト・カネ・モノ」の質・量とそれらのバランスということになるかと思います。

ただ、そもそもラボが独立した組織として存立するためには、その前提として研究を遂行する為の資金と道具が必要になってくるので、「カネとモノ」というのはラボを立ち上げる際の必要最低限の条件になってくるかと思います。そう考えると、やはりラボを立ち上げた後に最も重要になってくるのは「ヒト」だということになるかと思います。つまり、PIを含めたラボメンバーの資質と組織力が肝要だということです。特にここ数年はそのように痛感しております。

幸い今主催しているMTRラボのメンバーは皆、能力・性格ともに素晴らしい人達で、自分の方が日々色々と助けてもらっております。特に現在実施している臨床研究は非常に大規模で複雑高度な内容なので、それぞれのラボメンバーの高いモチベーションと責任感なくしては決して成し得ません。例えて言うなら、うちのラボメンバーには、まさにF1チームのような組織力があります。

したがって、自分の役割は、カネとモノだけでなく、将来ある若者が活躍できるような土壌を形成・維持し、それぞれの可能性を高めていくことだと考えております。

野田賀大

あけおめです

あけましておめでとうございます(今更

1ヶ月間、何してたんや!という感じですが

悪びれず気を取り直してブログを書いていきたいと思います。

やっと抄読会も再開できたので
これからは若手のホープたちが
続々と更新するはずです。

理想は、日常の風景とアカデミックが半々くらいか。
いや、7:3か。
実際は9:1かな。


そういえば最近
イギリスからの留学生がラボに顔を出してくれてます。

日本は
「ココロノカゼ」とか「ヒキコモリ」とかの
ユルいワードをつかうことで
精神疾患への偏見が減ってるよね!

と言うてはりました。

わたしは毎日BBCでメンタル関連のニュースを
流してるほうがすごいと思うんですが、

隣の芝は青く見えるなぁ。
(出典:PANSS)



抄読会<OFC> 20181220 和田

ラボ内初の抄読会。
みんな簡単にやってくるという話でしたが、めちゃくちゃ手が込んでいておそるべしでした。

さて今回のテーマはOFCとのことですが、みんなよく分からないので私が"wiki係 = 簡単にそのテーマの全体像を説明する"役割を担わせていただきました。

そんな中私が読んだ論文は以下の通りです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Cortico-Striatal-Thalamic Loop Circuits of the Orbitofrontal Cortex: Promising Therapeutic Targets in Psychiatric Illness
Peter Fettes et al.  2017 Apr 27)

Review論文であり、OFCの機能、構造、疾患への影響を簡単にまとめたものです。
OFCはmedial (mOFC)とlateral (lOFC)の二つに分けられるため、それぞれに対して考察を加えています。
以下は詳細です。

・ OFCの機能については様々なことが言われている
- assignment of value: 価値の割り当て、恐らく物事の優先順位・価値判断をするということか?
- reward and reversal leaning: 報酬系の学習と、それを消去・変更する学習
- reward prediction error: 予測報酬誤差、予測した報酬と結果の誤差の認識
- fictive error:??自分が経験していない結果の誤差?
- emotional reevaluation, reappraisal: 感情の再評価
- generation of affective state: 感情の統合
- decision-making
- soicial cognition

・解剖学的な構造
- medial OFCとlateral OFCに大きく分けられる
- figure2の通りこの二つの領域は脳のほとんど異なる領域とconnectionを持っており、オーバーラップしてconnectivityを持つことはほとんどない

・structural connectivity
> mOFC
→ ventromedial caudate(VM caudate), ventral putamen, medial portion of the nucleus accumbens
→ ventral pallidum, substantia nigra(SN)
→ dorsomedial, ventroanterior, ventrolateral nuclei of the thalamus
→ mOFC (Fig, 1A)
>mOFCはそれ以外にもbasolateral amygdalaをはじめ辺縁系、皮質など様々な領域と相補的なconnectivityを持っている

> lOFC
→  (VM caudate)
→ medial portion of the globus pallidus interna(GPi), SN
→  dorsomedial and ventroanterior nuclei of the thalamus
→ lOFC(Fig A2)
IOFCはそれ以外に感覚系の領域やpremotorに関わる領域と強いconnectivityを持っている

・functional connectivity
-- mOFCとlOFCで被りは少ない
- mOFC:DMNと強い関係あり
- lOFC:cognitive regionと強い関係あり

・functional role
> mOFC
- 報酬とそれにそれに関連するsignal(reward learningなど)を関連付け記憶するのに重要な役割を果たす
-またprediction errorも担う(予測していた報酬と実際の報酬の差を認識し、次の行動に反映する)
- つまりmOFCは報酬の行動を継続することのメリットの把握を担っている
- emotional reevaluationも同様で、報酬を得られる行動に対しpositiveな感情を持つ際に関わる
- 同様のことがdecision makingでも言える

> lOFC
- 予測や報酬記憶の消去・再学習に重要な役割を果たす→罰に関連する
- 報酬を求める行動を継続するよりも、それに基づく行動を変更するのに役立つ
- emotional reevaluationも同様で、報酬に対する感情を変更する際に関わる
- 同様のことがdecision makingでも言える

・各疾患における変化
> MDD
- mOFCの過剰な活性と喜ばしい刺激に対する反応性の低下
- うつ病の治療によってmOFCの活性が低下する
- mOFCとdACCのconnectivityの低下
- 同様にlOFCの活性の増加と治療による低下が認められる
- OFCはamygdalaや視床下部ともconnectivityがあるので、それらの機能低下に伴う代償的な反応の可能性あり
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