新しい抄読会の名前募集中

私は以前、抄読会を以下のような内容で若手の先生たちと行なっていました。
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・概要(論文の結論を一行で)
・研究の背景(この論文が出版されるにあたった背景。基礎知識が必要ならその説明)
・アブストラクト(英語&日本語)
・結果説明(図の掲載を含む)
・新規性・重要性
  -この論文は過去の報告と比較して何が新しく、どこに価値があるのか
・問題点
  -比較・検証は正しく行われているか?
  -アウトカムとその根拠との間に飛躍はないか?
  -どのような工夫で信頼度が増しそうか?
・外的妥当性
  -目の前の患者さんにはこの論文の結果が使えそうか
・発展性
  -この論文は今後どのように展開していくべきか
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Special thanks Dr. Sumi & Dr. Kawamura @ SUMS


ちなみに今出ている新しい抄読会@MTRラボの
素案は以下の通りです:

・ゆるふわな感じでやる
・4コマ漫画にする
・体全体で表現する


・・・どうなることやらです。
でも最新論文が4コマになったら超需要あると思うんですよね。

rTMS for ASD <1>

意外と読んでくださっている方がいるので続いて書いております。
ありがとうございます。

私は精神科医なので所謂「こころのお医者さん」ですが
娘(4歳)は「トトロのお医者さん」と聞き間違えているので
そのままにしてあります。
サンタと一緒で何歳まで信じるか楽しみなので
毎日必死にトトロ診療実績を捏造して会話しています。
(「きょうは なんの おしごと?」
 「今日はトトロの脳を解剖して調べた」など)

今日はNIHのClinicalTrials.govに登録されている
ASD(自閉スペクトラム症)に関するrTMS介入研究
をのぞいてみることにしたいと思います。

1. Deep rTMS (Repetitive Transcranial Magnetic Stimulation)for Treatment of Autism Symptoms in Children.

 なになに、20人のASDの方々をActiveとShamに割付。
 そしてActiveが「low-frequency rTMS to the left DLPFC (Dorsa-Lateral Pre-Frontal Cortex) prior to high-frequency deep rTMS to the FFA (Fusi-Form Area) through the STS(Superior Temporal Sulcus). 」

 ・・・結構いきなりFFAとSTSに来ましたね。 
  low-frequency rTMS to the left DLPFCは、わかる。
 これまでのASDに対するrTMS研究ではこのパラメータが一番多いから。
 でもFFAとSTSかあ。なんでだろ〜なんでだろ〜
 STSは、一応、心の理論(Theory of mind)とか、社会的な理解とか、注意力に関連してると言われてるからわからんことないんですけどfusiform areaはよく知りませんでした。
 「fusiform autism」でpubmed検索すると193件。ごめんなさい
 とりあえず分かり易げな
 Asymmetry of fusiform structure in autism spectrum disorder: trajectory and association with symptom severity. Mol Autism. 2016 May 24
 をみると、とりあえずfusiform gyrus(FFG)は表情認知と関連してるのだけれども、特に右のFFGは顔そのものを意識的に認識することに関与していて、左のFFGはもっと一般的な知覚とか物体認知に関連しているらしい(意訳)。しかもamygdalaとサーキット形成しているらしい。めっちゃASDに関係しそうや。ごめんなさい
 というわけで、このClinical trialは、従来通りのlow-frequency to the left DLPFCと、あとは賦活したらいいことありそうなSTSやfusiformにやってみようという感じですね。
 rTMSは場所も刺激方法も何もかも動かせるから無限にClinical trialができてしまいそうです。
 (でもprimary outcomeがCGIって超あいまい)

2....

も書こうとしたのですが時間がないので1. だけです。
重ね重ねごめんなさい(じゃあ番号ふるなよ)。
 
F.M 

みんな書いてね

若手で超ゆるい消毒照度区ショウドク抄読会を行うという話が出ております。
抄読会というのは常に一発変換されないのでいちいち「智恵子抄」などと入れるのが難儀です。 

前の職場でも「草の根抄読会」という若手抄読会をしていたのが懐かしいです。
研修医の時から抄読会や勉強会を立ち上げては失敗した経験上、若手が自発的に立ち上げて続けるコツは2つあると思っています。

一、コアメンバーとして2人以上で立ち上げること
  一人で立ち上げ=立ち消え必須。責任持って運営して毎回出席できる人を自分以外にもう一人は確保すること。3人いるとなお良い。増えすぎると責任感が分散するから2、3人がベスト。

二、やみくもに批判する人や攻撃的な人にはちょっとどいておいてもらうこと
  学会じゃないんだからそんなところで攻撃しても百害あって一利なしだと思っています。恐怖と萎縮は、自由な発想の最大の敵だ!やだカッコいい!!

これさえ守れば8割は続くのではないかと思っております。

最近また中島先生が興味深い論文を教えてくださいました。
The Complexities of Evaluating the Exposome in Psychiatry: A Data-Driven Illustration of Challenges and Some Propositions for Amendments

Schizophrenia Bulletin August 2018 


Exposomeって初めて聞きましたが、 みなさまご存知でしょうか。

「個体に対する環境からの曝露」を、こう呼ぶそうです。

一般的に環境要因は2種類に分けられるらしい。

・General external environment:気候、人間関係、都会か田舎か、など
  
・Specific external environment:食べ物、タバコ、麻薬、運動、など

これらが関与して、Internal environmentに影響を与えたり、
個人の疾患発症リスクを上げたりするということ。

もともと免疫系の話題から発症したらしいですが、精神疾患でも重要だ!と言われ始めたということのようです。論文では、Netherlands Mental Health Survey and Incidence Study-2 というデータセットを使って、リスクファクターと精神病症状に関する、プレ解析のようなことをしていました。
今までもcannabisと精神病症状はかなり関係が深いということは言われていますが、この論文でも綺麗な相関図を出しつつ、いろいろな解析モデルを試して15%しか有意に相関しなかったと正直な記載。
提言がメインのこの論文ですが、特に精神疾患では重要になる概念のような気がします。それこそ大麻、養育環境、移民、民族、仕事環境だってそうだし、疾患の発現や悪化にどう考えても影響しそう。

特に私が専門(※なんちゃって)にしつつある発達障害は、診断基準に「社会的コミュニケーションの障害」というのがメインで入っています。
本当は生物学的であってほしい診断基準なのに、すでに外部環境との相互作用という概念が大きく入っている状況。

外部の環境を定量化して解析して、予防・治療できたらさいこーだし、
そのぶん生物学的にアプローチしないといけないところがより明確になるかなと思っています!!

なんてことを本日の実験中に書きました。
実験お疲れ様でした。

 F.M
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