2018年12月

抄読会<OFC> 20181220 和田

ラボ内初の抄読会。
みんな簡単にやってくるという話でしたが、めちゃくちゃ手が込んでいておそるべしでした。

さて今回のテーマはOFCとのことですが、みんなよく分からないので私が"wiki係 = 簡単にそのテーマの全体像を説明する"役割を担わせていただきました。

そんな中私が読んだ論文は以下の通りです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Cortico-Striatal-Thalamic Loop Circuits of the Orbitofrontal Cortex: Promising Therapeutic Targets in Psychiatric Illness
Peter Fettes et al.  2017 Apr 27)

Review論文であり、OFCの機能、構造、疾患への影響を簡単にまとめたものです。
OFCはmedial (mOFC)とlateral (lOFC)の二つに分けられるため、それぞれに対して考察を加えています。
以下は詳細です。

・ OFCの機能については様々なことが言われている
- assignment of value: 価値の割り当て、恐らく物事の優先順位・価値判断をするということか?
- reward and reversal leaning: 報酬系の学習と、それを消去・変更する学習
- reward prediction error: 予測報酬誤差、予測した報酬と結果の誤差の認識
- fictive error:??自分が経験していない結果の誤差?
- emotional reevaluation, reappraisal: 感情の再評価
- generation of affective state: 感情の統合
- decision-making
- soicial cognition

・解剖学的な構造
- medial OFCとlateral OFCに大きく分けられる
- figure2の通りこの二つの領域は脳のほとんど異なる領域とconnectionを持っており、オーバーラップしてconnectivityを持つことはほとんどない

・structural connectivity
> mOFC
→ ventromedial caudate(VM caudate), ventral putamen, medial portion of the nucleus accumbens
→ ventral pallidum, substantia nigra(SN)
→ dorsomedial, ventroanterior, ventrolateral nuclei of the thalamus
→ mOFC (Fig, 1A)
>mOFCはそれ以外にもbasolateral amygdalaをはじめ辺縁系、皮質など様々な領域と相補的なconnectivityを持っている

> lOFC
→  (VM caudate)
→ medial portion of the globus pallidus interna(GPi), SN
→  dorsomedial and ventroanterior nuclei of the thalamus
→ lOFC(Fig A2)
IOFCはそれ以外に感覚系の領域やpremotorに関わる領域と強いconnectivityを持っている

・functional connectivity
-- mOFCとlOFCで被りは少ない
- mOFC:DMNと強い関係あり
- lOFC:cognitive regionと強い関係あり

・functional role
> mOFC
- 報酬とそれにそれに関連するsignal(reward learningなど)を関連付け記憶するのに重要な役割を果たす
-またprediction errorも担う(予測していた報酬と実際の報酬の差を認識し、次の行動に反映する)
- つまりmOFCは報酬の行動を継続することのメリットの把握を担っている
- emotional reevaluationも同様で、報酬を得られる行動に対しpositiveな感情を持つ際に関わる
- 同様のことがdecision makingでも言える

> lOFC
- 予測や報酬記憶の消去・再学習に重要な役割を果たす→罰に関連する
- 報酬を求める行動を継続するよりも、それに基づく行動を変更するのに役立つ
- emotional reevaluationも同様で、報酬に対する感情を変更する際に関わる
- 同様のことがdecision makingでも言える

・各疾患における変化
> MDD
- mOFCの過剰な活性と喜ばしい刺激に対する反応性の低下
- うつ病の治療によってmOFCの活性が低下する
- mOFCとdACCのconnectivityの低下
- 同様にlOFCの活性の増加と治療による低下が認められる
- OFCはamygdalaや視床下部ともconnectivityがあるので、それらの機能低下に伴う代償的な反応の可能性あり

抄読会<OFC> 20181220 増田

いよいよはじまりました抄読会・通称:ぐで会。
これから少しずつ紹介していきたいと思います。
今日のテーマはOrbitofrontal cortex:OFC
最近はAutismの社会的モチベーションに関わる部位としても注目を集めています!

私が読んだ論文は以下の通りです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Reduced orbitofrontal cortical volume is associated with interdependent self-construal. 
(Kitayama et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Jul 25)

相互協調的自己観が強い人ほど、OFCのgray matterが減少している

特に『物体イメージ』の認知スタイルが強い人で顕著
という結果が示されています。 


相互協調的自己観というのは初めて聞きました。
そもそも、文化的に2種類の自己観があると言われているそうです。

相互独立的自己観 independent self-construal

自己を他者から独立した存在として捉える

欧米で優勢

個人が自己主張することが重要

相互協調的自己観 interdependent self-construal

自己を他者との関係性のなかで捉える

東洋で優勢

周囲と調和することが重要、自己主張は慎まれる
 

というような感じらしいです。

この研究は、

・被験者:健常人135人
・質問紙:Self-construal scale & cognitive style
・画像:3.0-Tesla Siemens MRI

を取って、質問紙と画像の関係を見ているという結構シンプルなものです。

筆者曰く、OFCはself-interestと関わっていて、self-interestが下がることで他人を優先して関わるような態度になるという仮説を立てています。ただし、最初からOFCの体積が小さいのか、Self-interestの抑制を強制されるような文化的環境にいるからOFCが小さくなるかは、不明だとか。ちなみに頭頂葉や側頭葉の皮質厚は、欧米人の方がアジア人よりも大きいそうです。

うつ病だと逆にself-interestが上がってしまっていそうですよね。和田先生がこのへんは詳しく教えてくれるかもしれません。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

こんな感じで不定期にゆるくやる予定です。
次回のテーマもOFC!

学会報告@ACNP

大学院生の尾久守侑先生が、
12月9日-13日にフロリダで開催された米国精神神経薬理学会(ACNP)にて、
ポスター発表をされました! 

統合失調症患者におけるグルタチオン濃度に関す
るメタアナリシスについてです。
こちらは、現在論文投稿中!

Kamiyu Ogyu, Sakiko Tsugawa, Yoshihiro Noda, Ryosuke Tarumi, Yu Mimura, Kazunari Yoshida, Yusuke Iwata, Muhammad Elsalhy, Minori Kuromiya, Shin Kurose, Fumi Masuda, Eric Plitman, Masataka Wada, Takahiro Miyazaki, Ariel Graff-Guerrero, Masaru Mimura, Shinichiro Nakajima; Glutathione levels in patients with schizophrenia: A systematic review and meta-analysis; American College of Neuropsychopharmacology 57th Annual Meeting, Hollywood, 2018.12.12 


大学院生のうちから海外で発表する機会が多くあるのは素晴らしいですね。

発表の写真があればよかったのですがあいにく手元にないので、
皆様で尾久先生の勇姿をあらん限り想像していただければと思います。

留守番

再来週の水曜日からいよいよ
抄読会をしようという話をしています。
ゆるい感じにしようという話にしているのですが
名称が
「ふなっしー会」

「ぐでたま会」

決まりません。

また今後抄読会の話題や論文は
こちらにもアップしたいと思います。
ちなみに次回のお題は「OFC(眼窩前頭皮質)」の予定です。
渋い。

ところで、12月8日にラボから一本論文がアクセプトされました!
 
TITLE OF ARTICLE: Clinical Effectiveness of Repetitive Transcranial Magnetic Stimulation Treatment in Children and Adolescents with Neurodevelopmental Disorders: A Systematic Review 

JOURNAL: Autism 

ALL AUTHOR(S): Masuda, Fumi; Nakajima, Shinichiro; Miyazaki, Takahiro; Tarumi, Ryosuke; Ogyu, Kamiyu; Wada, Masataka; Tsugawa, Sakiko;Croakin, Paul; Mimura, Masaru; Noda, Yoshihiro 

 
発達障害を持つ小児に対するrTMS治療の総論です。
生物学的介入方法が非常に限られている疾患群だけに
非侵襲的で副作用の少ない(ほぼ同義?)rTMS治療は
今後の応用が期待されています。はずです。多分。
私がファーストなのですが本当に先生方には感謝しきりです。
これからもTMS-EEG研究やrTMS研究、
頑張っていきたいと思います。


中島先生たちはアメリカに学会に旅立っていますが
野田先生や宮崎先生たちと留守を守りたいと思います。


F.M 

新しい抄読会の名前募集中

私は以前、抄読会を以下のような内容で若手の先生たちと行なっていました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・概要(論文の結論を一行で)
・研究の背景(この論文が出版されるにあたった背景。基礎知識が必要ならその説明)
・アブストラクト(英語&日本語)
・結果説明(図の掲載を含む)
・新規性・重要性
  -この論文は過去の報告と比較して何が新しく、どこに価値があるのか
・問題点
  -比較・検証は正しく行われているか?
  -アウトカムとその根拠との間に飛躍はないか?
  -どのような工夫で信頼度が増しそうか?
・外的妥当性
  -目の前の患者さんにはこの論文の結果が使えそうか
・発展性
  -この論文は今後どのように展開していくべきか
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Special thanks Dr. Sumi & Dr. Kawamura @ SUMS


ちなみに今出ている新しい抄読会@MTRラボの
素案は以下の通りです:

・ゆるふわな感じでやる
・4コマ漫画にする
・体全体で表現する


・・・どうなることやらです。
でも最新論文が4コマになったら超需要あると思うんですよね。
ギャラリー
カテゴリー